2016.08.19 ( Fri )

歴女と刀剣女子が集う新しい歴史サークルの波

今大学の歴史サークルには女子が大量に入部しています。彼女たちの目的は何なのでしょうか?異変が起こりつつある大学の歴史サークルについてのレポートです。


名古屋城
 
最近すっかり定着した、歴史好きな女性を指す言葉、“歴女”。

そして2015年頃から話題となっている“刀剣女子”。

 

この言葉たち、ご存知でしょうか。

今、一部の女子の間でブームとなっていて、なおかつ、ありとあらゆる場所に影響を与えているのです。

 

今回は、そんな今話題の“刀剣女子”を中心に、“歴女”に始まる歴史ものブームがどのように始まり、どのような展開を見せ、それがどのような影響を世の中に与えているのかについて取り扱っていきたいと思います。

 

戦国時代の熱さに魅せられる

 

これまで、歴史や歴史ものというと、どちらかといえば、男性が好むものというイメージが先行していたような気がします。

 

ですが2009年、ユーキャンの新語・流行語大賞に、“歴女”がトップテンに選ばれました[1]

これは、選ばれるまでの間、2005年に発売された、戦国武将を美化したアクションゲーム「戦国BASARA[2]」と、同時期に放送された二枚目俳優陣出演の大河ドラマや「天地人[3]」などによるいわゆる“戦国武将ブーム”が火付け役となったのだと言って良いと思います。

 

その後、歴史ものブームの波は一端収まったかに見えた2015年、改めて新語・流行語大賞に“刀剣女子”という言葉がノミネートされました[4]

これは文字通り、刀好きの女性を指す言葉です。

刀剣を擬人化したブラウザゲーム「刀剣乱舞[5]」がその火付け役となったのです。

 

今や、歴史は男性だけのものでなく、楽しみ方は違えど、男女ともに楽しむことのできるコンテンツとなっているのです。

 

歴女って何?

 

“歴女”とは、前述したとおり、歴史、主に戦国時代や戦国武将などを好む女性を指す言葉です。

ゲームやドラマの影響もあり、それ以降、城郭や城跡、古戦場跡、その他の史跡に足を運ぶ女性が増えて、城郭には「おもてなし武将隊」という、その城にゆかりのある戦国武将に扮した集団が登場しました。

 

実際に筆者も直接自分の目で見る機会や、テレビ番組などで特集が組まれていたのを目にしたことがありますが、衣装など細かいところまで手が込んでいる印象でした。

安っぽいコスプレというよりは本格的な装備という感じです。

 

そして、その効果もあって、武将の家紋をあしらったデザインの物の売れ行きが良くなったり、新商品が生まれたり、和柄の需要が増えていることはよくニュースで取り上げられます。

“歴女”による歴史ものブームが、新たな経済活動の場を生んだ分かりやすいケースです。

 

“歴女”という言葉が流行語大賞のトップテン入りを果たした2009年には、一説によると、その経済効果は700億円にも上ったというのです[6]

 

“歴史モノ”の関連グッズや書籍が売れ、武将自体を好きになった歴女たちがその武将の家紋やイメージカラーをモチーフとした小物や、来歴などが書かれた伝記などの書籍を購入します。

そして、その武将ゆかりの地をめぐる“巡礼”が行われ、地方へとお金を落とし、地域振興にも一役買うなどがその一例です。

 

女優やタレントの中にも“歴女”を公言する人がいるなど、今となってはすっかり世の中に定着した言葉なのではないでしょうか[7]

 

刀剣女子って何?

 
日本刀
 
“刀剣女子”とは、前述したとおり、「刀剣乱舞」という、名だたる武将が所持していた刀剣が擬人化して敵と戦うブラウザゲームを発端とする、刀や刀にまつわる歴史を好む女性を指す言葉です。

 

その後、それがきっかけとし、刀を特集した関連書籍の売り上げが伸び、ゲーム内に登場する刀剣を所蔵している博物館に問い合わせが殺到したりもしました。

 

その流れに乗ってか、ここ1年の間に、全国各地の博物館が次々に所蔵の刀剣の公開に乗り出し、博物館に若い女性が詰めかける、これまであまり見られなかった光景を目にすることとなったのです。

 

あまりの人気に、2015年11月、岐阜県と大分県の刀匠が、大太刀・蛍丸国俊を復元する「蛍丸伝説プロジェクト」を開始したところ、その寄付金の目標金額がわずか1日で集まるという快挙が成し遂げられたのです[8]

 

“刀剣女子”も“歴女”同様、一定の経済効果を生みます。

 

刀剣の場合も戦国武将の時と同様に、関連グッズやモチーフ小物が売れ、大型書店が特設コーナーを設けるほど関連書籍が売り上げを伸ばします。

田舎の書店でも規模は小さかったですが特集が組まれていたのを見かけました。

 

そして、現存する刀剣を実際に見ようと、多くの“刀剣女子”が、刀剣が所蔵されている博物館へと足を運ぶという流れができました。

多くの博物館で期間限定での公開だったので、多くの“刀剣女子”たち押し寄せたことでしょう。

今後も、続々とゲーム内に出てくる刀剣、または、その刀剣とゆかりある刀剣が期間限定で公開されます。

 

それに加えて、新語・流行語にノミネートされるほどある程度の話題性を帯びているものですから、テレビ番組などで取り上げられ、ますます広がりを見せたのです。

 

「刀剣乱舞」の勢いは、とどまるところを知りません。2015年末ころにはミュージカル[9]が、2016年に入ると今話題の2.5次元舞台[10]として、若手舞台俳優による豪華キャストで上演され、続編も上演予定です。

 

ゲームには人気声優を多数起用、ミュージカルや舞台では、その界隈で活躍する人気俳優を揃え、“オタク女子”にも関心の高いコンテンツとなっています。

さらに、アニメ化も決定し[11]、まだまだ勢いは衰えることなく今日まで続いています。

最近は刀剣女子のためのサークルもいろんな大学で誕生しています。

 

歴女や刀剣女子が与えた影響とは?

 

以上“歴女”と“刀剣女子”について少しまとめてみましたが、既に紹介した通り、来館者の数が下火になっていた博物館や史跡、歴史関連書籍の売り上げの向上に寄与し、新商品開発や新市場の形成、地方の課題とも言える地域振興にも一役買い、経済市場に利益をもたらしました。

 

加えて、そういった言葉がメディアで取り上げられ、話題になることで、そうした趣味嗜好を持った人々の存在が認知され、今まで“マニア”や“オタク”と呼ばれ、肩身の狭い思いをしていた人々の存在を知ってもらえる機会となったのです。

 

大学でもそういった趣味嗜好の人は少なからずいて見かけることがあるのですが、大体の人は普段はそれを隠しています。

私たちが持っている一昔前のオタク像とは変わってきているのです。

 

何も知らずに「あいつオタクなんだよ」と言って偏見を持たれるよりも、「こういう趣味を持つ人がいるんでしょ?」に受容してもらえた方が本人たちは嬉しいものです。

 

中には、歴史をバカにしていると言って、このような「歴史の再解釈」やそういう特集が組まれるのをよく思わない人ももちろんいるでしょうが、こういった少数派の認知度を上げるのにも効果的なコンテンツだと言えます。

 

どんな良いコンテンツであっても、多くの人に好きになってもらわなければ経済効果を得られません。

歴史はそれを守るためにも莫大な費用を必要とするので、このようなムーブメントが生まれることは「歴史と現代文化の共存共栄のモデル」と考えられるのではないでしょうか。

 

受験と違う歴史のロマン

 

もう一つプラスの影響を挙げるのであれば、それは、よく言われる「歴史離れ」への特効薬という点です。

 

受験を通じて誰しも歴史は勉強してきた経験があると思いますが、学校などで習う時の社会科科目というのは、すっかり暗記物として定着してしまっています。

受験の際、社会科科目いずれかの科目を使おうとすれば暗記になってしまうのは当然のことのように感じますが、領土問題や第二次世界大戦、太平洋戦争をめぐる歴史認識問題等々、昨今の国際状況のように非常にデリケートな問題を抱えている日本で、歴史離れが進行しているのは事実です。

 

歴史が日常生活の中での実用性はほぼ皆無なので仕方ないといってしまってはそれまでですが、紹介してきたようなコンテンツをきっかけにして、どこか縁遠く感じている歴史をとても身近な物にしてくれる要素を含んでいると思うのです。

 

授業や講義を受けている中で自分の知っている話題が出てきたら少しでも興味を持って聞けるのではないでしょうか。

「歴女」や「刀剣女子」の誕生はそんなきっかけに成り得るコンテンツであるとも言えるのです。

 

無理矢理詰め込んだ暗記モノの受験勉強はすぐ忘れてしまうでしょうが、それが趣味となりえた段階で歴史はストーリーを持ち始めます。

もし、そんなストーリーを知った歴史好きの人が将来先生となって指導するようになったとすれば、きっと教え子たちはもっと自然に歴史好きになるのかもしれません。

 

歴史好きなら分かってほしいこと

 

最後に、ありとあらゆるところにプラスの影響を与えた歴史ものブームですが、決していいことばかりではないことも忘れてはなりません。

 

“歴女”による戦国武将ブーム、“刀剣女子”による刀剣ブームに起因する、さまざまな経済効果などがあったことはすでに紹介しましたが、その一方で、マナーや整備の問題が指摘されます。

 

これまであまり人が訪れなかった史跡や古戦場跡というのは、正直なところ、整備が行き届いているとは言えません。

そのため保護体制が充分に生き届いていない場合もあり、そういった史跡の一部が損傷したりするのです。

 

そして、観光客が多く訪れることを前提とされていないところではごみのポイ捨てなど、マナー違反をする人がいたり……と悲しい話題も確かに存在するのです。

これを「経済の副作用」と呼ぶ人もいるようですが、最終的には個人のマナーの問題です。

 

メディアに取り上げられることは基本的に良いことですが、話題性を持つことが歴史史跡を危険にさらす可能性があることも理解しておかなければなりません。

今後も全国の史跡等でこのような事態が起こらないとは言い切れません。

いくら地域振興などになるとはいえども、維持・管理・整備の面での課題はおのずと見えてきます。

 

歴史を趣味にしてみませんか

 

いかがでしょうか。

“歴女”と“刀剣女子”に由来する女性の歴史ものブームがどのように始まり、どのような展開を見せ、それがどのような影響を世の中に与えているのかについて考察してきました。

 

戦国時代や三国志など、特定の時代を好きな女性を“戦国乙女”とも呼ぶそうです。

人によっては王道の戦国時代を好む人もいますし、新選組が活躍した幕末を好む方もいますし、中には、三国志を好む人やマニアックな時代や物を好む人もいるようです。

 

歴史に詳しくなくても、ゲームなどのコンテンツから興味を持っていけるのは「ハードルが低くなる」という意味でとても良いことだと思います。

受験で学んだ歴史を「たんなる暗記モノ」としてではなく「様々な人々の物語」として理解し直すことは、大学生という時間のあるタイミングにピッタリだと思います。


以下、参考URLです。

[1] 新語・流行語大賞公式サイト、第26回〔2009年(平成21年)〕、(http://singo.jiyu.co.jp/)。

[2] 2005年発売の個性溢れる戦国武将が活躍するスタイリッシュ英雄(HERO)アクションゲーム。戦国BASARAシリーズ公式サイト、(http://www.capcom.co.jp/game/basara/)

[3] 48作目の大河ドラマ、“歴女”が新語・流行語大賞を受賞した2009年に放送。

[4] 前掲(1)、トップページより。

[5] 2015年1月にサービスを開始したDMMとニトロプラス共同制作のブラウザゲーム。(公式サイト:http://www.dmm.com/netgame/feature/tohken.html)

[6] 琉球新報「歴女ブームで700億円の経済効果!?「戦国武将萌え」現象を調査」、(http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-151658.html)。

[7] 女優の杏、“歴ドル”の小日向えりが代表として挙げられる

[8] 寄付金募集ページ、(https://faavo.jp/minonokuni/project/839)。

ITmediaニュース「名刀「蛍丸」復元プロジェクト、開始1日で2500万円到達「予想以上の反響」「愛好家として、刀鍛冶としてもう1度その姿を見たい」」、(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1511/02/news097.html)。

[9] ミュージカル『刀剣乱舞』公式ホームページ(https://musical-toukenranbu.jp/)

[10] 舞台『刀剣乱舞』(http://www.marv.jp/special/toukenranbu/)

[11]アニメ『刀剣乱舞』公式サイト-(http://touken-anime.com/)。2017年放送予定。

アニメ『刀剣乱舞-花丸-』公式サイト(http://touken-hanamaru.jp/)。2016年10月放送予定。

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